2026.09.10
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2026年、取扱説明書やマニュアル制作に関係するJIS規格が大きく変わりました。
従来、電気・電子分野の取扱説明を中心に利用されてきた「JIS C 0457:2006」に代わり、「JIS Z 82079-1:2026」が新たな規格として制定されています。
今回の変更で重要なのは、単に「取扱説明書の書き方が変わった」ということではありません。
対象がソフトウェアや技術サービスまで広がり、紙の取扱説明書だけでなく、Webマニュアル、動画、アプリケーション内のヘルプなどを含めた「使用情報」全体を、どのように設計・制作・管理・更新するかという考え方が明確になっています。
製品メーカーにとっては、既存マニュアルの内容だけでなく、
といった運用面まで確認する必要性が高まっています。
この記事では、JIS Z 82079-1:2026について、旧規格であるJIS C 0457:2006との違いを中心に、メーカーが確認しておきたいポイントを解説します。
JIS Z 82079-1:2026は、製品の「使用情報」の作成に関する一般原則や要求事項を定めた規格です。
対応する国際規格は「IEC/IEEE 82079-1:2019」です。
従来のJIS C 0457:2006も国際規格IEC 62079:2001と整合した規格でした。そのため、今回初めて国際規格への整合が行われたわけではありません。
国際規格の世代更新に合わせて、日本国内の規格についても適用範囲や要求内容が更新された、と捉えるのが適切です。
特に重要なのが「取扱説明書」より広い「使用情報」という考え方です。
製品を安全かつ適切に利用するための情報は、冊子やPDFだけに存在するとは限りません。
例えば、
など、複数の媒体を通じて提供されています。
JIS Z 82079-1:2026では、こうした情報をまとめて「使用情報」として捉え、製品のライフサイクル全体を通じて設計・管理していく考え方が整理されています。
メーカーのマニュアル制作実務に特に影響すると考えられる変更点を見ていきます。
JIS C 0457:2006は、主として電気及び関連分野の製品に対する取扱説明を対象としていました。
一方、JIS Z 82079-1:2026では、工業製品や消費財だけでなく、応用ソフトウェアや技術サービスなども対象に含まれます。
そのため、例えば機器メーカーであっても、「本体の取扱説明書だけを作ればよい」とは限りません。
製品にスマートフォンアプリが付属している場合には、アプリの使用方法も含めて情報設計を考える必要があります。
産業機器であれば、
など、複数の使用情報が存在するケースも少なくありません。
製品本体とソフトウェアを別々の制作物として考えるのではなく、利用者が製品を使用するために必要な情報全体を設計する視点が重要になります。
今回の規格変更を理解するうえで、非常に重要なのが「使用情報」という考え方です。
JIS C 0457:2006でも冊子だけを対象としていたわけではなく、製品上の表示や視聴覚情報なども取扱説明に含まれていました。
JIS Z 82079-1:2026では、それらをより明確に「使用情報」として捉え、
などを、利用者のニーズに合わせて提供する考え方が整理されています。
したがって今回の変更を、「紙のマニュアルからWebマニュアルへ移行する規格」と理解するのは適切ではありません。
重要なのは媒体ではなく、利用者が必要な場面で、必要な情報に適切にアクセスできるかという点です。
紙、PDF、Web、動画など、それぞれの特性を考えながら使い分ける必要があります。
JIS Z 82079-1:2026では、使用情報に求められる情報品質について体系的に整理されています。
主な評価軸には、
などがあります。
ここで注意したいのが「ミニマリズム」です。
単純に文章を短くしたり、ページ数を減らしたりすればよいという意味ではありません。
安全に関する重要な情報など、利用者に必要な情報を残したうえで、不要な情報を削減し、必要な内容を適切な量で提供することが重要です。
マニュアルの品質確認というと、「誤字脱字がないか」 「文章表現が分かりやすいか」といった校正・校閲をイメージしがちです。
しかし、これからはさらに、
「必要な情報そのものが抜けていないか」
「WebとPDFで説明内容が食い違っていないか」
「利用者が必要な情報までたどり着けるか」
といった観点まで含めて確認することが重要になります。

従来のマニュアル制作では、「原稿を作る」 「DTPを行う」 「PDFを納品する」といった制作工程に意識が向きがちでした。
JIS Z 82079-1:2026では、情報管理プロセスについて、
までを一連の工程として整理しています。
さらに、反復可能なプロセスや単一情報源管理についても扱われています。
そのため、今後のマニュアル管理では、「誰が原稿を作ったのか」だけでなく、
「何を基準版とするのか」
「誰が確認するのか」
「誰が承認するのか」
「変更内容をどの媒体へ反映するのか」
「公開後にどのように更新するのか」
といった運用まで考えることが重要になります。
特に紙、PDF、Webマニュアルを併用している場合、それぞれを個別に修正していると内容の不一致が発生しやすくなります。
情報源を整理し、各媒体へ展開する仕組みを構築することが、マニュアル制作の品質と更新効率の両方を高めるポイントになります。
マニュアルを分かりやすくするためには、文章表現だけを改善すればよいわけではありません。
JIS Z 82079-1:2026では、対象者について、使用情報を分析・計画する段階で検討する考え方が整理されています。
対象者を考える際には、
などを検討します。
例えば同じ産業機器でも、
「初めて操作する作業者」
「日常的に使用するオペレーター」
「メンテナンスを行うサービス担当者」
「システムを設定する管理者」
では、必要となる情報が異なります。
すべての情報を一冊に詰め込むより、
など、役割や目的別に情報を整理した方が利用しやすいケースがあります。
マニュアル制作前の「対象者分析」や「情報設計」が、これまで以上に重要になります。
JIS C 0457:2006でも電子媒体や動画は扱われていたため、Webや動画が今回初めて認められたわけではありません。
JIS Z 82079-1:2026では、対象者に応じた媒体選択や、必要なときに情報を利用できることなどが、より具体的に整理されています。
例えば、操作方法を伝える場合は動画が分かりやすくても、故障によって製品画面が表示されなくなった場合、その画面内にしか復旧方法が掲載されていなければ確認できません。
そのため、
「すべてWebにすればよい」
「すべて動画にすればよい」
ということではありません。
製品の利用状況を想定しながら、
を整理する必要があります。
製品は発売した時点で完成するとは限りません。
現在では、
などが頻繁に行われます。
しかし製品だけが更新され、マニュアルが旧仕様のまま残ってしまうケースもあります。
JIS Z 82079-1:2026では、製品変更や新規リリースへの対応、利用者からのフィードバック、更新情報の提供など、納品後の使用情報の維持・改善も管理工程として整理されています。
そのため、マニュアルについても、「初版を制作して納品すれば終了」ではなく、「製品とともに継続して維持・更新する情報」として考える必要があります。
特にWebマニュアルでは更新が容易な反面、
「いつ変更したのか」
「どの製品バージョン向けなのか」
を管理しなければ、逆に情報が分かりにくくなる可能性があります。
JIS Z 82079-1:2026では、情報管理プロセスの中で「構成管理」も扱われています。
基準版を確定し、変更を管理するとともに、変更や公開時にレビュー・承認を行い、使用情報の各版と対象製品との関係を追えるようにする考え方です。
従来から、「第1版」 「Rev.2」 「2026年9月改訂」といった版番号を付けている企業は多いでしょう。
しかし重要なのは番号そのものではありません。
例えば、
まで確認できる状態にしておくことが重要です。
製品数や言語数が増えるほど、Excelなどによる手作業だけでは管理が複雑になります。
マニュアル制作と同時に、改訂や版管理の仕組み自体を見直すことも検討すべきでしょう。
既存のマニュアルがある場合、まず次の項目を確認してみることをおすすめします。
既存のマニュアルがある場合、まず次の項目を確認してみることをおすすめします。
誰が、どのような場面で、その情報を利用するのかを確認します。
文章表現だけではなく、「必要な内容そのものが存在するか」を確認します。
PDF、Web、動画、FAQなどで情報に矛盾がないかを確認します。
製品やソフトウェアが更新された際、マニュアル側へ変更が反映される仕組みになっているか確認します。
誰が内容を確認し、正式版として承認するのかを明確にします。
どの製品に対して、いつ、どの版の使用情報を提供したのかを確認できるようにします。

JIS規格とは別に、EUへ製品を輸出しているメーカーでは、新しい製造物責任指令「Directive (EU) 2024/2853」についても確認が必要です。
EU新PL指令による変更点や、日本のメーカーが取扱説明書・マニュアルについて確認しておきたいポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「EU新PL指令で取扱説明書はどう変わる?日本メーカーが準備すべき5つのこと」
EU新PL指令では、ソフトウェアや販売後の更新に関する責任が明確化されるとともに、訴訟における証拠開示や一定条件下での立証負担軽減の仕組みが設けられています。
使用情報についても、
といった運用の重要性が高まります。
ただし、JIS Z 82079-1への適合やマニュアルの版管理を行えば、PL責任を回避できるという意味ではありません。
規格への適合と法的な製造物責任の判断は別の問題です。
また、Webマニュアル化自体がEU新PL指令で義務付けられたわけでもありません。
製品の技術的な安全性や法令への適合については、各メーカーの技術・品質・法務部門や専門家と確認する必要があります。
JIS Z 82079-1:2026への移行で重要なのは、規格の文言だけを確認することではありません。
これまで企業内で個別に管理されていた、
などを「使用情報」という一つの視点から捉え直すことが重要です。
そして、
「誰に」
「どの情報を」
「どの媒体で」
「どのタイミングで提供し」
「どのように更新・管理するのか」
を整理することが、これからのマニュアル制作には求められます。
テックスフィアでは、メーカーの取扱説明書・マニュアル制作を長年支援してきた経験をもとに、既存マニュアルの構成・文章・図解・多言語展開・Web化まで対応しています。
JIS Z 82079-1:2026への移行を機に既存マニュアルを見直したい場合には、規格の情報品質に関する考え方などを参照しながら、
などを確認し、改善方法をご提案します。
また、既存のPDFマニュアルをWeb上で利用・更新しやすくする仕組みや、今後の改訂を見据えたマニュアル運用についてもご相談いただけます。
「新しいJISに合わせて、現在のマニュアルを一度確認しておきたい」
「紙・PDF・Webのマニュアルがバラバラに管理されている」
「製品のアップデートが多く、マニュアル改訂が追いつかない」
といった課題がある場合は、お気軽にテックスフィアまでご相談ください。
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