マニュアルの重要性とメリット

マニュアル改善は「問い合わせ・トラブル・コスト」にどう効くのか─一次資料と数字で見る、取扱説明書の本当の価値

2026.02.09

INDEX

「マニュアルを改善しても、どうせ取説は見られない」

製造業やBtoBメーカーの現場で、何度となく聞かれる言葉です。
しかし本当に、取扱説明書は見られていないのでしょうか。
そして、マニュアル改善は問い合わせやトラブル、コスト削減に効果がないのでしょうか。
結論から言えば、マニュアル改善は確実に「問い合わせ・トラブル・コスト」に影響を与えます。
しかもそれは感覚論ではなく、一次資料と実務データで裏づけられた事実です。
本記事では、

  • 国際的な調査・規格という一次資料
  • 実務で再現性の高い数値
  • をもとに、マニュアル改善の効果を整理し、あわせて「取説は見られない」という誤解を論理的に解きほぐしていきます。

取扱説明書が実際には使われていない状態とは

  • 情報は載っているが、探しにくい
  • 技術的に正しくても、利用者の理解を前提にしている
  • 注意事項や仕様が内容の中心で、読み飛ばされる

このような取扱説明書は、存在していても実務上は機能していません。

問い合わせの多くは「故障」ではなく「使い方」

【結論】問い合わせの大半は製品不良ではなく、使い方や設定の理解不足が原因です。

まず押さえておきたいのは、問い合わせの大半は製品不良ではない、という事実です。
現場感覚では、問い合わせというと
「故障しているのではないか」
「設計に問題があるのではないか」
と考えられがちですが、実際のデータは異なります。

一次資料①:HDI が示す問い合わせの実態

一次資料①:HDI が示す問い合わせの実態

【結論】問い合わせの約60〜70%は「使い方」「設定」「操作手順」に起因しています。

HDI(Help Desk Institute)は、世界中のサポートセンターを対象に、問い合わせ内容の分類調査を継続的に行っています。
その結果、分野や国を問わず共通しているのが、

  • 問い合わせの約60〜70%が「How-to(使い方)」「設定」「操作手順」

という傾向です。
これはIT製品だけの話ではありません。
産業機械や業務用機器といったBtoB製品においても、メーカーの問い合わせログを分類すると、

  • 操作方法
  • 初期設定
  • 誤解による不具合

が大半を占めるケースがほとんどです。
つまり、多くの問い合わせは「壊れている」のではなく、「分からない」だけなのです。

マニュアル改善は問い合わせを減らすのか

【結論】適切に設計されたマニュアルは、問い合わせを確実に減らします。

では、マニュアルを改善すると本当に問い合わせは減るのでしょうか。

一次資料②:Gartner が示す削減効果

ユーザーの評価は、性能だけで決まりません。

  • 情報の正確性
  • 情報の配置
  • ユーザーの行動に即した構成

これらが揃った場合に、はじめて実現できる数値です。

実務で再現される改善効果

実務で再現される改善効果

実務レベルでも、

  • 初期設定を1ページ目に集約する
  • トラブル時の対処を分岐フローで示す
  • NG例を写真や図で明示する
  • 言語の追加対応

といった改善を行うことで、特定の問い合わせが30〜50%減少するケースは珍しくありません。
これはGartnerが示すレンジと、十分に整合する結果です。

問い合わせ削減は、そのままコスト削減になる

【結論】問い合わせが減ると、対応コストはそのまま削減されます。

問い合わせ削減の効果は、感覚的な話ではなく、数字として可視化できます。
例えば、

  • 月間問い合わせ件数:1,000件
  • 1件あたり対応コスト:1,500円(人件費+間接費)

とすると、月の問い合わせ対応コストは150万円です。
ここでマニュアル改善により問い合わせが20%削減されると、

  • 月30万円
  • 年間360万円

のコスト削減になります。
多くの場合、マニュアル改善費用は1年以内に回収可能です。
マニュアルは「コスト」ではなく、継続的に効くコスト削減装置だと説明できます。

トラブル・事故は「情報不足」でも起きる

【結論】設計不良でなくても、情報の伝え方次第で事故やトラブルは発生します。

次に、トラブルや事故との関係を見ていきます。

一次資料③:ISO が示す取扱説明書の位置づけ

【結論】マニュアルは、安全対策の正式な一部です。

ISO 12100(機械安全)では、リスク低減手段として以下を正式に位置づけています。
1. 本質安全設計
2. 保護方策
3. 使用上の情報(取扱説明書・警告表示)
つまり、取扱説明書は「おまけ資料」ではなく、安全対策の一部として設計段階から求められている存在です。
情報提供が不十分な場合、「リスクが残っている状態」と判断される可能性があります。

一次資料④:消費者庁 の事故データ

【結論】事故の一定割合は、誤使用や注意喚起不足が原因です。

消費者庁の事故情報データバンクを見ると、事故原因の中には必ず、

  • 誤使用
  • 使用方法の誤解
  • 注意喚起不足

が含まれています。
これは、設計不良とは別に、「正しく伝わっていない」ことが原因の事故が存在することを示しています。

マニュアル改善はトラブル確率を下げる

【結論】マニュアル改善は、事故やトラブルの発生確率を下げます。

マニュアル改善の役割は、事故をゼロにすることではありません。

  • 危険度を視覚的に分ける
  • やってはいけない操作を明示する
  • 読まなくても目に入るレイアウトにする

こうした工夫によって、誤操作や軽微なトラブルは20〜50%程度減少します。
これは品質部門や法務部門にとって、非常に大きな意味を持ちます。
なぜなら、1件の重大トラブルは数十〜数百万円の間接コストを生むからです。

「取説は見られない」は本当か?

【結論】取説は熟読されませんが、必要な瞬間には必ず参照されます。

「どうせ取説は見られない」という指摘は、半分正しく、半分間違っています。
正しい点は、

  • 最初から全部読む人はいない
  • 困っていないときは読まれない

という点です。 一方で、間違っているのは、

  • 困ったときには必ず探されている

という事実を見落としている点です。
ユーザーは「読む」ために取説を見るのではありません。
「答えを探す」ために見るのです。

見られる取説とは何か

【結論】探しやすく、すぐ答えにたどり着ける取説が見られます。

見られる取説には共通点があります。

  • やりたいこと・困ったことから探せる
  • 結論が先に書いてある
  • 図やNG例だけで理解できる

このような取説は、熟読されなくても、必要な瞬間に確実に使われます。
そしてそれこそが、取扱説明書の本来の役割です。

マニュアル改善の本質的な価値

【結論】マニュアル改善は、問い合わせ・トラブル・コストを同時に下げる施策です。

マニュアル改善とは、

  • 問い合わせを減らし
  • トラブル確率を下げ
  • コストとリスクを同時に抑える

ための、再現性のある施策です。
「どうせ取説は見られない」という言葉は、取説を「読ませるもの」だと誤解しているだけです。
取扱説明書は、「読ませるもの」ではなく、「困った瞬間に人の代わりに答えるツール」
そう定義し直したとき、マニュアル改善は確実に問い合わせ・トラブル・コストに効いてきます。

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『マニュアルのすべて』 運営会社
株式会社テックスフィア

取扱説明書などのマニュアル類の制作や、世界40ヶ国語に対応する多言語翻訳、Webページ/Webマニュアルの制作、
カタログ・パンフレットなどの販促物の制作、CGを駆使した製品紹介動画の制作など。
産業機器から家電製品まで技術に強いドキュメンテーション制作会社です。

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